I've Had It  c/w  C'mon and Roll  by  CARL GROSZMANN



レーベル第3弾めのシングルは、1975年11月14日リリース、オーストラリア出身ミュージシャンのこの曲でした。

 

カール・グロスマンさんは十代の頃から豪州ミュージックシーンで音楽活動を開始し、それなりに名前が売れていたようで、極初期のビージーズ(The Bee Gees)=英国生まれ豪州育ち、に楽曲をカバーされたりもしていたようです。1960年代末に音楽仲間数名とともに英国ロンドンへと移住して音楽活動をつづけます。


移住してすぐの1970年に自身が書いた「ダウン・ザ・ダストパイプ(Down the Dustpipe)」という楽曲が英国のバンド、Status Quo(当時の日本盤リリース元レコード会社の表記に従うと、ステイタス・クオ)に取り上げられ、全英最高位12位のスマッシュヒットとなりました。


1973年には、こちらも英国生まれ豪州育ちなオリビア・ニュートン=ジョン(Olivia Newton-John)嬢に「片想い(Being on the Losing End)」という楽曲も提供。日本では、独自選曲編集のベスト盤で金ピカジャケットの「クリスタル・レイディ(Crystal Lady Golden Double 32)」という二枚組レコードに収録されていました。

ちなみにカールさん、楽曲提供のときはスペルが少し違ってGrossmann名義、豪州時代はCarl Keatsという名前でした。




そんな地道な活動の末、リング・オーと契約したカールさんにリンゴの期待も大きかったみたいで、リンゴが76年に発表するポリドール移籍第一弾アルバム「リンゴズ・ロートグラヴィア (Ringo's Rotogravure) 」のA面1曲めにして先行シングルにカールさん作の「ロックは恋の特効薬(A Dose Of Rock'n Roll)」が選ばれています。

また、カールさんのこのシングルリリースと同時期にアルバム制作も企画されたらしく、実際にリング・オーのレコード番号までアナウンスされていましたが結局未発表。そのカタログ番号である2320 102は欠番となっています。




この音源もカップリングの「C'MON AND ROLL」共々現在までオフィシャルでのCD化、デジタル音源化はされていないと思います。A面の「I'VE HAD IT」は日本語に訳すと「もうやだ」みたいな常套句ですから、YouTubeで検索すると別アーティストの同名異曲がたくさんヒットします。

プロデュースは、Peter Gage氏という人で、60年代に英国でそこそこ名を馳せたパブ・バンドのメンバーで70年代には、よりファンキーな別バンドで活動していた人、以上の情報は探せていません。なのでレコーディング参加メンバーも不明です。



サウンドはというと、50~60年代ノスタルジック寄りの陽気でポップでキャッチーなロックという感じ。声質がしゃがれ気味だけれど通る感じに独特で、楽曲の傾向としてはラトルズ(The Rutles)で有名なニール・イネス(Neil Innes)氏の70年代初期ソロ作品に通じるものがあるかな、と感じました。


このシングル盤は英国リング・オーのみのリリースで他国では一切リリースされませんでした。更に77年にもう一枚リング・オーからカールさんのシングルのリリースがあるのですが、その際のプロモーション用ライナーノートではそっちのシングルがデビュー盤とされ、こっちのシングルは無かったことにされていました。


なお、カールさんは2018年7月にオーストラリアで亡くなられたそうです。Rest in Peace.


カールさん絡みでは、ロートルなビートルファンであれば興味深いエピソードがまだあるのですが、それは次作シングルの項で。